西洋文化とマルメロ 2(神話,民間伝承とマルメロ)

エデンの園の禁断の果実?

 エバは本当に,エデンの園にある禁断の「善悪の知識の木」からもぎ取ったリンゴにかじりついたのだろうか?

 聖書には,後にはリンゴについてふれられるものの,彼女がその木から味わった果実に特定の名前は与えられていない。

 

ある歴史家は,エバの誘惑の果実はザクロか,あるいはマルメロかも知れない,と信じている。

 

愛の女神アフロディテに捧げられる神聖な果実

 ギリシア神話の中で,マルメロは「ヘスペリスの黄金のリンゴ」として登場する。

 即ち,パリスが「最も美しい女神に」としてアフロディテ(ローマ神話でのヴィーナス)に捧げた「黄金のリンゴ」もマルメロであったということだ。かくしてマルメロはアフロディテの神聖な果実となる。

 

 リンゴもアフロディテの神聖な果物として有名であるが,歴史家の見解では,「リンゴ」と訳された果物は実はマルメロであるという。ギリシアにおいてリンゴの栽培が始まったのは BC 9世紀前頃とされるが,マルメロの導入はリンゴよりもさらに古く,トロイア戦争以前(BC 13世紀頃)と考えられている。

 

マルメロは花嫁へのプレゼント

 古代ギリシャ人はマルメロを多産の象徴とみなし,愛の女神に捧げた。

 

 古代ギリシャのアテネ人の婚礼における伝統として,花婿が花嫁を新居にエスコートする際の婚礼馬車の中に向かって友人や家族がマルメロを放り込むというのがあるそうだ。彼らが新居に到着したとき,花嫁は蜂蜜とゴマの香りのする儀式のケーキを食べる。その後,子だくさんの保証として,花嫁はマルメロをプレゼントされるのである。

 

 なお,16世紀のヨーロッパでは「妊娠した女性がその間,大量のマルメロを食べれば,勤勉で非常に知性の高い子供が与えられる」という迷信があったそうだ。

 

イスラム世界でも妊娠中の健康食

 イスラム世界の「妊婦のために推奨される健康食」が列挙されているサイトがある("From Marriage to Parenthood: The Heavenly Path", Chapter 6, Pregnancy)。

 これによれば,妊婦がマルメロを食べると「美しく健全な子」を産む効果があるようだ。

 

以下,抜粋 ------

 

7. Quince

 

a. Is a cause of strength of the heart, cleanliness of the stomach, clearness of the mind and bravery and beauty of the child.

 

b. Gives lustre to the heart, and cures the inner pains (with the permission of Allāh [swt] ).

 

c. It has been narrated from Imām as-Sādiq (as) that a pregnant woman should eat quince, so that her child is more sweet smelling and his/her colour is purer.

 

d. It is narrated from Imām as-Sādiq (as): “Make pregnant women eat quince, as it makes their children beautiful.”

 

e. It is narrated from the Prophet (s): “Eating quince makes the colour of the skin clear and full of freshness, and makes the child of a person beautiful and healthy as well.”

 

Quince contains Vitamins B1, B2, B6 and C, magnesium and phosphorus