カリンが日本へ来たのはいつ?

カリンはいったい,いつ日本に来たのか。

 

確かな情報と共にこの疑問を解決してくれる文献には,まだ出会っていない。

 

一般的な植物図鑑等では「平安時代のころ」,「江戸時代」,あるいは「明確でない」といった記述がなされている。いずれにしてもはっきりした記録がない,ということであろうが,平安時代と江戸時代ではかなり開きがある。

 

しかし,一方では弘法大師(空海)が唐よりカリンを持ち帰ったとする記述がある。「カリンのど飴」で有名な LOTTE がカリンについて紹介しているホームページには,かつてこの経緯が詳しく記されていて,「カリンが日本に伝わるのは今から1200年前(9世紀初め)」とあったが,最近はページが更新されて説明がなくなってしまった。

 

それはともかく,9世紀当初(800年代初め)にカリンが持ち込まれたのであれば平安時代(794年-1185年頃)に渡来したわけであるから,平安時代の年中行事の中で使用される「卯杖」に使われる植物の一つとして「榠櫨」(メイサ,即ち,カリン)の記述があることに矛盾がなくなる。

 

さらに,藤原定慧が唐からの帰国(678年)の際に持ち帰ったといわれる談山神社の「菴羅樹(安蘭樹)」が当初よりカリンであったとするならば,その渡来はさらに遡って飛鳥時代ということになるのだが・・・?

 

ちなみに,1995年発行の『食材図典』(小学館)には「平安時代以前に渡来した」と明記されている。

記載内容 参考文献 出版

「平安時代」(またはそれ以前)

『食材図典』 1995年,小学館

『原色 日本植物図鑑』 1979年,保育社
「江戸時代」 『図説 花と樹の事典』 2005年,柏書房
  『新編 原色果物図説』 1996年,養賢堂
  『漢方のくすりの事典』 1994年,医歯薬出版
「明確でない」 『新版 原色食品図鑑』 1992年,建帛社
  『園芸植物大事典1』 1988年,小学館
  『果樹全書 特産果樹』 1985年,農文協