マルメロとマーマレード

マルメロはマーマレードの語源となった果実である。

 

マーマレードは今でこそカンキツを使用したジャム類のような位置付け*であるが,もともとはマルメロを素材とするものであった。

 

マルメロ(marmelo)はポルトガル語であり,ポルトガルでは,マルメロ果肉を水煮してマッシュし,砂糖と共に煮詰めた果肉ペーストをマルメラーダ(marmelada)と称している。これが英国で「marmalade」として定着したのだ(Wilson, 1999)。

ポルトガルで市販されているマルメラーダ
ポルトガルで市販されているマルメラーダ

 

 ちなみに,マルメロの果汁(煮汁)のみを砂糖と煮詰めた透明なゼリーは当初「quodiniacke」,後に「quidony」あるいは「quiddany」と呼ばれ,区別されている。

 

・・・というわけで,18世紀頃からオレンジマーマレードに主導権を奪われるまで,「マーマレード」といえばマルメロの果肉ペーストを指していたのである。

 

現在では,定義からして完全にマルメロは敗北してしまった感がある・・・。

 JAS(日本農林規格)では,マーマレードは「ジャム類のうち,かんきつ類の果実を原料としたもので,かんきつ類の果皮が認められるものをいう。」と定義されている(最終改正平成20年)。

 

なお,CODEX(国際食品規格)では,かつて「ジャム(フルーツプリザーブ)およびゼリー」と「柑橘マーマレード」を別の 規格としていたが,近年に統合された(CODEX STAN 296-2009)。この中では,マーマレードを「柑橘マーマレード」,「非柑橘マーマレード」および「ゼリーマーマレード」に分けて定義付けている。