カリンとマルメロの学名について

カリンの学名

 

  • カリン属として:Pseudocydonia sinensis (Thouin) C. K. Schneider
  • ボケ属として:Chaenomeles sinensis (Thouin) Koehne

 

カリン属の学名にある,pseudo- は「疑似の-」,「偽の-」を意味し,cydonia はマルメロ属を表す。また,種小名の sinensis は「中国の」という意味なので,その意味は「中国の偽マルメロ」!

 

(おっと,マルメロが偽カリンだったのではなく,学術的にはカリンが偽マルメロだったのか!)

 

一方,ボケ属の学名は,ギリシア語の chaino「大きく裂ける」と melon「リンゴ」に由来する「裂けたリンゴ」という意味の名前である。

 

(?ボケやカリンの実が裂ける??あんなに硬い果実が?)

 

余談になってしまうが,実は,ボケ属を表す Chaenomeles の命名については,かなり疑義がもたれているのだ。

 

Chaenomeles 属の属名は,Lindley (1822) によってつけられたが,彼はボケ属の果実の特徴を見て名付けたわけではなく,Thunberg が 1784年にクサボケ(当時, Pyrus japonica;現, C. japonica)について書いた記述「Pomum ・・・・ 5-valve, 5-loculare (英語だと,Apple ・・・・ on 5 cracking part with 5 rooms)」の情報に基づいて付けたものであるらしい (Dolatowski, 2005)。

 

Dolatowski は,「裂けたリンゴ」などという(現実離れした)名称は,Thunberg の誤った記述(おそらく押しつけられて裂けたような植物標本を見たのであろう)が Lindley に提供された結果なのだ,としている。

 

学名とは,そんなものなのか!?

 

 

マルメロの学名

 

  • Cydonia oblonga P. Miller

 

マルメロ属の cydonia が意味するところはクレタ島の北西岸の古代都市 「Cydonia」(現 Canea)である。この地方からの質の良い果実がギリシア人に知られ,Mela Kudonia (Cydonian apple) として認識されるようになったからと言われる。種小名の oblonga は「長楕円形の」の意味。つまり,「長楕円形をしたキドニア産のリンゴ」というような名前である。