カリンとマルメロはどのように分類されるか
カリンは,バラ科(Rosaseae)カリン属(Pseudocydonia 属)の1属1種とするC. K. Schneider博士の説が最も新しいものであるが,それ以前はボケ属(Chaenomeles 属)に分類され,現在でもこの属名が使用されることは多い。
ボケ属?カリンとマルメロだけでも混乱が起きているというのに,ここでまた「ボケ」というものまで登場した。実はカリンとマルメロ以上に,カリンとボケの方がややこしいかも知れない。
Cuizhi & Spongberg (2003) は Flora of China 誌の「木瓜属」の項で Chaenomeles sinensis としてカリン(木瓜)の形態を他のボケ属4種(C. speciosa, C. cathayensis, C. japonica, C. thibetica)とともに解説している。
そういうわけで,カリンの学名は以下の2つがよく使用される(学名の意味についてはこちら)
- カリン属に分類されるとき:Pseudocydonia sinensis (Thouin) C. K. Schneider
- ボケ属に分類されるとき:Chaenomeles sinensis (Thouin) Koehne
カリンとボケは植物体の特徴よりも,果実の形態が似ているように思う。似ていると言っても,カリンの実は黄色くて大きいが,ボケの実は小さくて丸く,橙黄色であるというように,似ているような違うような,という感覚ではあるが。Rumpunen (2002) は「北欧における可能性を秘めた新しい作物」としてボケ属3種(C. speciosa, C. cathayensis, C. japonica)を解説しているが,その果実の写真はカリンのものとそっくりである。特に C. cathayensis の果実は長径 15 cm,180 g ほどで,大きいものになると 600 g 以上になると書かれており,これではカリンと区別もつかない。(ただし,Cuizhi & Spongberg は C. cathayensis の果実をここまで大きなものと記しておらず,直径6ー7cmとしている。)
一方,マルメロはカリンと違い,古くから「マルメロ属」であったようで,学名は下記のものが一般に使用される。
- マルメロ属:Cydonia oblonga P. Miller
(Cydonia vulgaris Pers. もマルメロの学名としてはよく見かけるが,上記に統一されたようである。)
実は,カリンやボケも,マルメロと一緒にマルメロ属(Cydonia 属)に分類されていたころがある。さらに古くはナシ属(Pyrus 属)に入れられていたというように,時代と共に分類も変化するのである。